服について知っている人には、こんな発言はしないと思います。
でも、服を知らない人にとっては、もしかしたら”こんなことを言っちゃう”かもしれませんね。
また、発言しなくても、不思議に思っているかもしれません。
ですので、”こんな発言”をしてしまったら、すぐに”この人は洋服について知らない”というレッテルを張られちゃうことになります。
くれぐれも注意しましょう。
長々と話しましたが、
ところで、”こんなこと”って何だと思いますか?
それは、”本切羽”です。
服を知っている人でしたら、おおよそ想像はつくかもしれませんね。
これは、私が派遣社員として勤めていた時の話です。
洋服好きな上司と私は普段から洋服について話すことがありました。
ある時、その上司が本切羽のスーツを着ていて、第一ボタンだけ外していたのです。
それに気が付いた私は、「本切羽ですね^^」といって盛り上がっているところに、別の派遣社員がやってきて、上司に
”袖の釦(ボタン)取れていますよ”
といってしまったのです・・・
私と上司 「???」
(あ~、この人、本切羽のこと知らないんだな~)ということがすぐに分かってしまうのです。
洋服を知っているか、知らないか、そんなことは、洋服に興味がない人にとっては、どうでもいいことかもしれませんね。
でも、少しでもお洒落になりたい、と思われていらっしゃる方は、こういう発言は避けたほうがいいと思います。
(1)本切羽(ほんせっぱ)、本開き(ほんあき)とは?
本切羽とは、スーツの袖のボタンを開け閉めできて、袖がまくれる仕様のことです。
どうしてスーツの袖をまくる必要があるのか?というと、こんな由来があります。
本切羽のことをドクターカフといわれるのですが、
医者が在宅診察をするときに、上着を脱がないで診察や手術をするために、袖がまくれるようにしたという由来です。
日本では、上着を着ないでシャツ姿でも、特に不自然ではないのですが、海外ではシャツは下着とみなされているため、下着姿では失礼に当たる、という考え方があるためです。
そのため、余談ではありますが、上着を着ないのであれば、ウエストコート(ベスト)を着る、という風潮があるのです。
もともと、今のスーツの原型は、英国の貴族が普段着として着用するラウンジスーツ(くつろいだ時に着るもの)で、その時すでに本切羽だったかもしれません。
今のように、スーツは既製品(レディメイド)ではなく、スーツは誂えるビスポーク(オーダー)が主流でしたので、本切羽だったかもしれないのです。
ここらへんのことは、詳しく調べてみないと分かりませんが、今回は割愛します。
本切羽の由来は、医者が診察をするからという説は本当かどうかは分かりません。
ですので、本切羽のスーツを着ているからといって、何かの目的のために上着を着たまま、袖をめくって何か作業するというようなことは、上の由来のように医者が診察する為など、今ではあまりないように思います。
シャツが下着という考え方は、今でも海外などではあると思いますが。
私自身は、本切羽のスーツを着ている方が、袖をめくりあげている場面を見たことがありません^^
ですので、めくり上げる必要はないといっていいと思います。
ただ、最近はファッションの着こなしの一部として”ボタンを開ける”という着こなし方があります。
(2)本切羽のボタンは開けるもの?留めるもの?
だいぶ前から、パターンオーダーやビスポークといった誂える服が注目されてから”本切羽”が脚光を浴びてきたように思います。
”本切羽”は、オーダー特有のオプションの一つです。
パターンオーダーやビスポークは、自分の好みに合わせて洋服を作ってもらえるので楽しいですね。
そんな”本切羽”は、実は、パターンオーダーやビスポークが注目を浴びる以前から、お洒落な人や洋服好きの人は気にする部分ではありました。
最近では、既製服(レディメイド)でも、もとから”本切羽仕様”になっていることがあります。
昨年、とても猛暑の時期に、GUで黒の麻のジャケットを購入したのですが、初めから”本切羽仕様”になっていてちょっと驚きました。
”GUもなかなかやるな~” と嬉しくなりました^^
さて、”本切羽のボタンは開けるもの?留めるもの?”の本題に入りたいと思います。
随分前に、メンズファッション雑誌『OCEANS』(2006年 4月 増刊号)の記事で、
本切羽のボタンを開ける(ボタンを外す)のは、「これ見よがし」的で格好悪い、とありました。
”理由は、ボタンをすべて留めてしまっても、正統の本切羽ならば一目瞭然で、それとわかる。
ボタンホールの「かがり」が違うから。”
というものでした。
この時、この記事を読んで思ったことは、「そんなに頑なに正統を意識しなくてもいいのではないかな~」という感想でした。
何を隠そう、私は第一ボタンを開けるのが好きです^^
「これ見よがし」ですね。
男性の服装って、女性の服装に比べてそれほど変化のないものです。
大まかにスーツでいえば、
着丈が短くなったり長くなったり、
上着のラペル(襟)の幅が細くなったり太くなったり、
パンツの幅が細くなったり太くなったり、
全体的に細身になったりゆったりになったり、
ぐらいなものです。
スーツの生地や色や柄も、新しい生地などの変化はありますが、特にビジネスシーンで着る服装は、それほど変化がありません。
そうした中で、本切羽の第一ボタンを開けるのは、変化がつくし「これ見よがし」的にお洒落感をアピールしちゃってもいいんじゃないかな?と思うわけです。
でも、この記事をご覧になられているあなたが、やっぱり、正統の着こなしをしたい、のであれば、ボタンをすべて留めるのも良し、です。
何でもかんでも、雑誌のいうとおりにしなくてもいいのです。
自分基準で洋服を着るのを楽しめばいいのです。
ある程度の基礎的な部分を抑えておけば・・・
(3)「これはしないほうがいい」と思う事
そんな”本切羽”ですが、私が「これはしないほうがいい」と思うことがあります。
それは、”ボタンかがりの色糸を1色だけ派手にすること”です。
”ボタンかがりの色糸を1色だけ派手にすること”は目立ちすぎるし、格好悪いと思います。
パターンオーダーなどオーダーが、比較的敷居が低くなったことで、オプションが増えて自由度が増してきました。
自由度が増すのは嬉しいことだと思うのですが、自分の中で”基準”がないと、いくらでもできてしまうので失敗してしまう事もあります。
パターンオーダーやオーダーのスタッフさんに、「”ボタンかがりの色糸を1色だけ派手にする”とお洒落になりますよ。」
とすすめられたのかもしれません。
または、自発的にそうされたかもしれません。
ファッションやお洒落は、個人の自由なので、”ボタンかがりの色糸を1色だけ派手にする”ことが好きで、お洒落だと思われる方は、ご自由にされて楽しんでみてください。
ただ、さりげない大人のお洒落を好まれるのでしたら、『OCEANS』の記事にあるように、
・ 本切羽でも、すべてのボタンを留めるか
・ 第一ボタンだけ開ける(外す)
のどちらかにしておくことを、私はお勧めします。